2017年2月16日木曜日

現代日本人文芸:二宮正治小説:二十歳の女性の愛と性:陽子の場合:第19回:

 陽子が住んでいる広島市安芸区矢野大井地区は荒れている。

無理もない。二十歳そこそこの女性が暴言を吐きまくるのだ。

「私も同じ女性。あの人達の思いはよく分かる。広島市民の無言のボイコットに逢い誰に

も相手にされなかったら私もああなる」

 陽子の同級生の明夫が、

「オレたちの住んでいる場所の悪評は広島だけではない。今東京で大問題になっている

し、世界各国でも猛烈に嫌われているのだ」

「本当それ」

「悲しいが本当だ。日本人に対しても蔑んだような事を言うが、外国人の場合はもっとひ

どい。アジアや中東からだけでなく、アメリカや南アメリカ、ヨーロッパの人々も怒りま

くっている」

「要するに世界各国じゃない」

 陽子はあまりの悲しさに大粒の涙をこぼした。

明夫も目に涙をためている。

 二人はお互いの涙を拭いてお互いの世界を撫でるのだった。





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