陽子が住んでいる広島市安芸区矢野大井地区は荒れている。
無理もない。二十歳そこそこの女性が暴言を吐きまくるのだ。
「私も同じ女性。あの人達の思いはよく分かる。広島市民の無言のボイコットに逢い誰に
も相手にされなかったら私もああなる」
陽子の同級生の明夫が、
「オレたちの住んでいる場所の悪評は広島だけではない。今東京で大問題になっている
し、世界各国でも猛烈に嫌われているのだ」
「本当それ」
「悲しいが本当だ。日本人に対しても蔑んだような事を言うが、外国人の場合はもっとひ
どい。アジアや中東からだけでなく、アメリカや南アメリカ、ヨーロッパの人々も怒りま
くっている」
「要するに世界各国じゃない」
陽子はあまりの悲しさに大粒の涙をこぼした。
明夫も目に涙をためている。
二人はお互いの涙を拭いてお互いの世界を撫でるのだった。
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