2017年1月26日木曜日

現代日本人文芸:二宮正治小説:二十代の女性の愛と性:第6回

 陽子は同級生の真理とその恋人の激しい愛の交歓を見て、

その激しい赤裸々な姿が頭から離れなくなった。

毎日自分の敏感な部分を自分で慰める日々が続いたのである。

しかし何か物足りない。

「私も男性を愛する事にする」

 意を決した陽子は自分から男性を釣って、愛の儀式をとり行う事にした。

ある週末繁華街を陽子は歩いた。しかし誰も声をかけてこない。

五時くらいから歩いているが、気がつくともう日が暮れて夜の帳が当たりを覆っている。

「おねえちゃん、素人がこの辺で商売しちゃあダメだ」

 陽子はこうそのスジの人に声をかけられた。

「こわい、どうしよう」

 恐怖に駆られた陽子は必至でその場所を逃げた。

息を切らせて立ち止まっていると、車から中年男性が声をかけてきた。

「おねえさん、食事でも一緒にするか」

 陽子は一瞬迷ったが、次の瞬間首を縦に振った。

物語は始まったのだ。

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