2017年1月28日土曜日

現代日本人文芸:二宮正治小説:二十歳の女性の愛と性:第7回

 陽子は誘われるままに中年男性とホテルに入った。

「なるようになれ」

 こう思ったのだ。

この中年男性は四十歳の割にはいい体格をしていた。

この中年男性は全身全霊で陽子の体を愛撫してくれた。

陽子も必死で感じたふりをした。

「気持ちいい」

「うん、とっても」

 男性はひどく嬉しそうだった。

陽子の醒めている心を知る由もない。

陽子は必死で感じたふりをした。

男性は必死で陽子を愛してくれた。だが、陽子に感動はなかった。

あるのは虚しさだけである。

「女の子はみんなこんな思いをするんだろうか。むなしい」

 陽子はネット検索で女の子の初体験を調べた。

「初体験は素晴らしかった。感動の涙が出た」

 この文章が目に止まった。

「うらやましい、よし、初体験をやりなおそう」

 陽子は初体験をやり直す決意をしたのである。

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