2017年2月20日月曜日

現代日本人文芸:二宮正治小説:二十歳の女性の愛と性:陽子の場合:第22回

陽子と明夫は中学校の時にお世話になったNと話し合っていた。

 このNは荒れ狂う広島市立矢野中学校を広島市でもトップクラスの中学校に変えてくれた

のだ。毛利家臣団の血を引く名門の家系の出身である。

 その大恩人のNが広島市安芸区矢野大井地区で今大いなるセクハラに遭っている。

陽子と明夫が見ただけでも今年になってから女性がNとすれ違いざまにNの体を触ってい

る。

「オレだけじゃないんだ。体格のいいこの地区の生まれでない男性は凄いセクハラに遭っ

ている」

 Nは苦々しげにこう言った。

「セクハラであると同時に逆差別じゃないか。逆差別は差別だ」

 明夫は体を震わせて怒った。

「広島市民の無言のボイコットに遭う理由がよく分かる」

 陽子は涙をこぼして怒っている。

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